おぜクリ通信
東京の○○
飯田美奈子
今年86歳の祖父は「東京の○○は美味しくないだろう?」というのが口癖。
決して東京をけなしているわけではなく、生まれ故郷を誇りに思う気持ちと、孫娘を心配しての発言なのでお許しいただきたい。
先日も「東京のワカメは美味しくないだろう?」と、たまげるほど大量の佐渡ワカメを送ってきた。
「お祖父様・・・お気持ちは嬉しいのですが、とても賞味期限内に食べ終える自信がありません。隣近所の皆様などにお分けしてもよろしいでしょうか?」
「それはかまわないが・・・なんだ、おまえはワカメが嫌いだったか?」
「いえ、むしろ好きでございます。好きですけど、あの量は・・・。」
「やっぱりワカメは佐渡が一番だからな!また送ってやるぞ!」
本当に優しい祖父で涙が出ます(色んな意味で)。
そんな祖父も昨年、胃潰瘍を悪化させて人生初の入院を経験。
周りの心配をよそに、本人はいたって前向きなのがわが祖父ながらあっぱれである。
「入院して、悪いところはなくなったからな!もっと長生きできるようになったぞ!」
「お祖父様・・・私も本当に嬉しいです。でも、お願いですから、しばらくはおとなしくしていてくださいね。」
「いや、そろそろ柿の時期だからな。東京の柿は美味しくないだろう?やっぱり柿はおけさ柿が一番だからな!ところでおまえ、次はいつ帰ってこられるんだ?」
その後、送られてきた柿(これまた大量)をモリモリと咀嚼しながら、故郷を思い、祖父を思い、しんみりと涙ぐむ私でありましたが、翌朝の体重計の数値を見て流した涙の量の方がはるかに多かったことは祖父には内緒です・・・。