おぜクリ通信
掘りごたつ
立石八重子
この季節になると、田舎では掘りごたつが出現した。
普段は 板張りのところに床板の一部を取ると、掘りごたつになるのである。
我が家は田舎だったせいか、150cm四方くらいのこたつだった。
物心がついたころは、ふろ場の焚口から、赤くなった炭を持ってきてそーっと真ん中のくぼみに入れていた。
そのうち、練炭になり、温かさが、長持ちするようになると、身長が小さいうちは、その中で寝転んだりしていたものだ。
足を置くスペースが四角くあったので潜って、隠れんぼもできた。
叱られて、こっそり泣いたのも、掘りごたつの中だった。
しかし、一酸化炭素が発生するので、気を付けないといけない。
1,2度、飼い猫がこたつから出てきた時に、ふらついていたことがある。
あの時はおそらく、一酸化炭素中毒にかかっていたのだろう。
今思えば、危ないところだったのだ。助かってよかった。
家を改築したときに 掘りごたつはなくなったが、冬になると 郷愁とともに思い出す。
あの頃のこたつを囲んで、わいわい、にぎやかだった食卓。
今は、電気こたつや、床暖房があったりして、なかなか快適に過ごせるが昔のあれこれを、懐かしく思い起こすようになったのは、私が、それ相応に年を重ねたためか。あの頃に戻れなくても懐かしい思い出があるのは幸せなことなのだろう。
皆様も、この冬が快く懐かしい時になりますように。